- HÉRNIなひと -
No.1 ビアトリクス・ポター

(1866-1943)絵本作家

産業革命が終わりを迎える頃のイギリス、彼女は当時、まだ世の中にはめずらしい女流絵本作家としてたくさんの絵本を世に送りだした。
今もなお、その絵本は世界中の子供たちに読まれている。



家庭は織物商人から地位を成した上流階級の家柄で、幼少期は年に3,4か月を湖畔の避暑地で過ごし、大好きな動物を買い与えられるような裕福な家庭環境にあった、彼女は避暑地で見た自然や生き物に関心を持ち、その興味や愛情はのちの彼女の人生の糧となり、彼女自身の根幹となったに違いない。


当時女性の地位はまだまだ低く、職業婦人として生きづらい時代。

階級社会のなか上流階級の女性はただお天気のはなしをしながらお茶…。
そんな一見豊かでありながら平穏で退屈な暮らしは、成長する彼女のため込んだ才能の邪魔をしはじめ、そののち苦悩と壁にぶつかるのである。

ただ彼女の素晴らしさはそんな家庭に反発しながらも家族も愛し理解していたこと。

彼女のひときわ長けた絵や想像力も女性というだけでその才能を開花させることも容易ではなかった。

菌類に関して研究者顔負けの論文を仕上げるほどの学識者であっても、女性だからという理由で研究者にはなれなかった。

たったひとり出会った理解者にも先立たれ、当時の時代背景のことを思えば、彼女の逆境は甚だ想像をこえるであろう。

そんなさまざまな境遇にも屈せず、貫いた彼女は長きにわたり世の人々に幸せと感動を生み、認知称賛された事実こそがすべてだと思う。

後期の彼女は自然保護運動に注力する。

出版で築いた財産で、美しい自然、景観を守るため、湖水地方に土地を買いナショナル・トラスト自然保護団体に尽くし、農場主、農婦として晩年をすごした。

子供の頃からの環境や時代に揺さぶられながら、ひとりの女性として恋もし、恵まれた環境に甘んじることなく信念をもち、人としての努力を惜しまず、気高く生き抜いた彼女にリスペクトを込めて…「エルニなひと」。

>HÉRNIなひととは

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